戸惑い

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どういうこと?近くに住んでるって聞こえたんだけど… 「…転勤で…今、どうしてるのかとか気になってたし…ストーカーとかじゃないから!それは違うから!えっと、その、」 しどろもどろな洸の動揺が手から伝わる。何かを心配して、決意して、こうやって僕の手を繋いでいるのは、僕の為だって理解出来る。 洸は洸なりに悩んだんだ……洸の世界に僕はどれくらい占めてきたんだろう。大人になって視野が広がって沢山の人と関わりながら生きている中のどれくらい僕は洸の中にいるんだろう。自分の行動はさて置き、こんなことを考えてしまうのは嬉しくて仕方がないからなんだ。 「ストーカーだなんて思ってないよ。転勤で近くに越してきた。偶然近くにこしてきたんだよね?」 偶然を強調すれば顔を引攣らせビクッと身体が揺れる。昔見たことのある気まずそうな何か言いたげな表情が昔の面影をのぞかせた。それを確認して答えが欲しくて嬉しさが込み上げてきているそばで、手に汗握る洸を感じている。 「…偶然3で必然7ぐらいだよ!翔がどうしてるのかずっと気になってた。その…いじめとか…引きこもりとか…色々考えてると心配になって…おばさんに住所聞いてたんだ。でも…学生の頃は…行ってない、行けなかった…」 学生の頃はって…一人で住み始めたのは大学に入ってからだ。それに僕ってどんなイメージで洸の中に残ってたんだろう。寮生活で引きこもってたら自宅に帰らされてしまうよ。 でも…それだけ心配かけてしまってたんだと思うのと同時に、ずっとそばにいてくれたことが堪らなく嬉しくて鼓動が早くなり始めたことを隠すように平静を装った。
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