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僕のマンションの真向かい。単身用マンションの入り口を当たり前のように入っていく。管理人に頭を下げると「おかえり」と声をかけられる。こっちを向かないまま洸はオートロックのドア先にカードを差し込むと簡単に扉が開き、そのまま真っ直ぐ歩き突き当たりの部屋の前で止まった。横を向けば向かいの僕のマンション2階のベランダが見える。そこにいるだろう僕の姿が想像できる。
ベランダからここよく見てたよ…
洗濯物を干したり週末は布団も干してた。それを全部見てたんだろうかと、若干引く。
カードを差し込めばカチャと開錠し、洸はドアを開けた。
服を掴んでいる手を離さないまま部屋の中に入っていく。下駄箱、洗濯機、冷蔵庫の並びに違和感を覚えながら、その隣のミニキッチンは生活感があるれているとこに洸の生活をが見えた気がした。
ガラスドアを開け部屋に入ると8畳ほどの部屋が現れる。ベッドとテレビと小さなテーブルしかない。生活感のない閑散とした部屋の半分は使われていなかった。
どかっとベッドに腰を下ろし僕を見る。その無表情な顔が、端正な顔立ちに冷たく見せる。
「翔…引いた?」
聞かれると思っていた想定内の問いにクスッと笑って洸のそばに立ち見下ろした。
「ちょっとだけ」
「ごめん…でも翔のそばに居たくて…その…言い訳させて…この部屋は偶然、会社の単身寮になってて、ほんと偶然で…俺的には運命を感じたんだけど」
その言い草がなんだか可愛くてあの頃の洸を思い出させる。引いたのは一瞬だけ。ずっとそばにいてくれたんだと思うだけで、1人じゃなかったんだって思えて嬉しくなる。
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