戸惑い

7/23

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
ホッとした顔で見下ろす洸の頬に手を伸ばして、ちゃんと気持ちを伝えないと始まらない僕達の関係に大きく息を吸い込んで真っ直ぐに真上の瞳を見つめる。 「ずっと洸の事ばかり考えて…思って生きてきた。手紙出せなくて…書かなくなって…書けなくなって…誰かと幸せになってるかもって思ってても洸の事忘れられなかった」 言葉にすると目の奥が熱くなる。洸が僕以外の誰かとなんて…よく思えたものだと。こんなに好きで頭から離れない人を忘れられるわけがなかった。後悔が押し寄せてきて想いと一緒に涙が溢れてくる。 それを優しく拭って確かめるように指先が頬を撫でる。 「昔から思ってたけど、翔は鈍いよな。俺はあの頃からずっと翔が好きで…幼馴染みとか、男だとかそんなの考えず、翔に惹かれてたよ。この気持ちがはっきりしたのは思春期だけど、戸惑いとかそんなのなかった。だけどさ、大人になって流石に翔が俺以外の人を好きになって誰かと…なんて思ったら居ても立っても居られなかったんだ」 それで近くでずっと見ててくれたのか。そう思えば、ストーカーまがいの行動でも嬉しさが込み上げてくる。 「ありがとう。ずっと好きでいてくれて…逃げて会いに行かなかった僕を許して…」 覗き込むその泣きそうな顔に思わず手を伸ばした。その手を絡めとりシーツに縫いつける。 「もう頬にキスなんかしない。翔…好きだよ。これからずっと一緒にいたい」 掠れた声も縫い付けられた手の感触もあの頃とは違う。あの頃の僕達はもういない。 だけど、『じゃあまたな、元気でな』なんて言わなくていいんだ。もう、次はいつ会えるんだろうなんて考えなくていい。 「…これ…つけてくれてたんだな」 転んだ拍子に首元に飛び上がった勾玉を愛おしそうに撫でる洸を見て、覗き込むその胸元に下がる勾玉と目が合う。 「洸…好きだよ…ずっと好きだった…もう離れたくない。次、いつ会える?なんて聞かれたくない。ずっと…そばにいたい…」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加