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毒華叫声
暗がりに舌を這わせ、薔薇の茂みを弄る。毒蛇の滑らかな鱗は粘液の痕跡を残留させて、白濁した毒液を滴らせる。黒々とした毛皮は凝脂で艶やかに、満月の赤銅の灯火で眩惑する。溶け出したバターが焦げるようなかぐわしい香ばしさは舌には苦く、わずかな記憶も赦さずに、火炎燃え尽き果てる。
ペタペタとしたカエルのような真っ赤な舌が、香絵の愛しいところを繰り返し愛撫する。そのくすぐったさに香絵は悩ましく喘ぎ、男に吐息を重ねて貪る。
「まったくいやらしいわ」
香絵の甘い声色は、発情した猫のうめきのように、快楽の高ぶりとある予感への希求を暗示する。その予感はひたひたと波のように香絵の身体を熱で満たし、重なりあった男女の肌を汗で繋ぐ。絶頂への移行は速やかには訪れず、男は香絵をひたすらじらし、羞恥をかなぐり捨てた、女の屈辱の愛液で、たっぷりと満たされた懇願の杯を要求する。
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