483人が本棚に入れています
本棚に追加
唯香ちゃんは、肩を竦め身震いさせた。少し唇が青く感じたのは、気のせいだろうか。二人共ダウンコートを羽織っていたとはいえ、強烈な寒さだった。
けれども唯香ちゃんも、私がこの前まで住んでいた東京に住んでいたなんて、信じられなかった。同じ土地に住み、同じ空気を吸っていたなんて。
そして何故かお互い、連絡をしなかった。高校時代あんなに仲が良かったのに。でもこうして再会して、また仲良くお喋り出来るのが、嬉しい。
別れた男と女なら、こうはいかないから。唯香ちゃんとは帰り道が違う為、カフェの前で解散した。
姉の住まいへ戻っていると、バターとチーズとハムの濃厚で食欲をそそる匂いが鼻孔をくすぐった。
私はドアをあけ「ただいま」と姉に言う。
「お帰り」
最初のコメントを投稿しよう!