483人が本棚に入れています
本棚に追加
姉は少しだけ私に視線を転じただけで、調理をしているフライパンにすぐに視線を戻した。先ほどより匂いが美味しそうで、ついつい駆け寄ってしまった。
「何を作っているの?」
「ガレットよ」
姉は得意げに言う。
「ガレットかぁ」
苦虫を噛みつぶしたような顔をする私を見て、姉は「ははん」とクスッと笑った。
「別れた彼ときっと行った事があるのね?」
にやりと意味ありげに笑う姉を見て、私は反論出来なかった。だって事実だったから。
姉は確かに学生時代、自分で言っていたように学力は劣る所があったかもしれないが、こういう直感や勘の鋭さはピカイチだった。色々人間、得意分野があるものだ。
私はバツが悪くて項垂れ気味になってしまった。そんな中でもフライパンからは美味しそうな香ばしい香りが、誘惑するように漂う。
最初のコメントを投稿しよう!