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「図星か」
その言葉に私はまた、無言になった。
「で、どんな男だったの?」
淀みなく姉は質問してくる。不快に感じた私は、眉を顰め姉を少し睨んだ。
「嫌な事、思い出させないで!」
ついつい反論した私がいた。
「そっか、ごめんごめん」
姉は軽く笑いながら、テキパキとフライ返しでガレットの生地を手早く折る。
定番の、ハムとチーズ、たまごのガレットだった。綺麗な焦げ茶色の生地と、白、黄色、ピンク、そして粉パセリの緑色は彩も綺麗で、食欲がそそる。
代官山へ、同僚だったあの『彼』と、フランス料理のレストランへ行った時に、ガレットを最後に注文した事を、思い出した。
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