信州そば粉のガレット

16/16
前へ
/296ページ
次へ
「図星か」  その言葉に私はまた、無言になった。 「で、どんな男だったの?」  淀みなく姉は質問してくる。不快に感じた私は、眉を顰め姉を少し睨んだ。 「嫌な事、思い出させないで!」  ついつい反論した私がいた。 「そっか、ごめんごめん」  姉は軽く笑いながら、テキパキとフライ返しでガレットの生地を手早く折る。  定番の、ハムとチーズ、たまごのガレットだった。綺麗な焦げ茶色の生地と、白、黄色、ピンク、そして粉パセリの緑色は彩も綺麗で、食欲がそそる。  代官山へ、同僚だったあの『彼』と、フランス料理のレストランへ行った時に、ガレットを最後に注文した事を、思い出した。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!

483人が本棚に入れています
本棚に追加