10/14
482人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
 なかなかガレットの注文が入らない。 (うーん……)  どうしたものだろうか。こちらとしては準備万端なのに、少し寂しい気持ちになった。  そんな気持ちになりながら、珈琲を運んでいる時だった。若いOL風の女性が一人入って来た。黒いカジュアルパンツに、赤いセーター。冬らしいパッとした色のコーディネートがとても似合っている。黒髪のおかっぱ頭に、赤リップの口紅がまた情熱的だった。  私と同じ位の年か、少し年は下かと思われる。 「ガレットと紅茶下さい。たまごのやつ」  彼女はメニューを見ずに、率直に言う。 「ありがとうございます。かしこまりました」  私はお水を置いた後、丁寧に頭を下げた。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!