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なかなかガレットの注文が入らない。
(うーん……)
どうしたものだろうか。こちらとしては準備万端なのに、少し寂しい気持ちになった。
そんな気持ちになりながら、珈琲を運んでいる時だった。若いOL風の女性が一人入って来た。黒いカジュアルパンツに、赤いセーター。冬らしいパッとした色のコーディネートがとても似合っている。黒髪のおかっぱ頭に、赤リップの口紅がまた情熱的だった。
私と同じ位の年か、少し年は下かと思われる。
「ガレットと紅茶下さい。たまごのやつ」
彼女はメニューを見ずに、率直に言う。
「ありがとうございます。かしこまりました」
私はお水を置いた後、丁寧に頭を下げた。
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