ガラスの靴のプリンアラモード

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1  新宿発のあずさに乗り、終点、松本駅で下車する。  ホームに降りた途端、氷のような冷たい風が私の身を包んだ。足の先から凍りつく。  完璧になめていた。忘れていた。故郷の信州が寒冷地だという事を。 (うわっ、寒い~!)  ウールのコートを着ていた私は大きく後悔し、身が縮こまる。信州の冬の寒さはウールのコートではしのげない。寒さの緩和にはあまりならない。ダウンが必要な地域だ。  一月。  駅のホームからも、左手の頂上には雪がたっぷりと、ホイップのようにデコレーションされた北アルプスが見える。晴れた冬の日は特に綺麗に見える。東京から初めてここへ旅行に来た人は、大体この北アルプスの美しさに感動する。  寒そうには見えるけれど、この雪山の北アルプスの峯は、切り絵のようだ。  しかし冬のこの寒さ。初めてこの地に住んだ人は皆、驚くのだそうだ。  無理もない。氷点下が当たり前だもの。  周辺を見渡すと雪かきをした後の雪のかたまりが、ところどころ視界に入る。  あぁ、私は信州に帰って来たのだと、実感した。  
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