ガラスの靴のプリンアラモード

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 大学を卒業し、大手の証券会社に就職してから私の生活は変わってしまった。深夜まで仕事をこなし、休日は動けずほぼ眠って過ごした。  私の担当は、セリング業務だった。証券の募集、売り出しの取り扱いをし、多くの投資家に勧誘するのが主な仕事。    しかし、ハードだった。  そんな毎日に心も体も、疲労困憊で何も出来なかった。金融会社は深夜まで残業は当たり前。誰かが帰ろうかと言わないと、なかなか帰れない。  そんな時思い浮かんだのが、故郷の風景だった。  何故だろうか。  私は故郷が恋しくて仕方がなかった。  私は会社で良い業績を残す事が出来なかった。私が勤務した、大手の証言会社は、いらない人間はどんどんと切り捨てる会社だ。私もその切り捨てられた一人だった。  寒さに我慢できず私は駅のホームの階段を上り、改札口を出る。  左側に進み『アルプス口』を目指す。  駅の開放感がある窓からは、先ほど見た北アルプスが更に近く見えた。だからこちらの西側の出口は『アルプス口』と呼ばれている。  この景色を何度見ても飽きなかった。  ただし、こちらの西側の出口の方は少し閑散としている。東側にある『お城口』よりは、人が少ない。
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