ガラスの靴のプリンアラモード

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 無職の身でタクシーに乗るのは、罪悪感を感じたが仕方がなかった。  私はロータリーに停まっているタクシーに手をあげ、後部座席に乗り、行先を告げた。  父と母の顔が今は怖かった。    心に色々準備が出来ていない段階で、故郷に帰るのはどうかと思ったが、私には行く当てがないのだから仕方がない。  職場恋愛をしていた彼とも、一か月前に別れてしまったし、彼には頼れなかった。それにあちらとしても、解雇を言い渡された女との交際は嫌だろうし、私も頼る気も全然なかった。  会社で会っても、別れてしまってからは全くの赤の他人のような存在になってしまったし。  営業部にいた元彼には解雇の事は言っていないが、そのうち部署内に伝わるだろう。 (あぁ~あ、何だかなぁ)  タクシーは告げた通り、北へ北へ向かっていく。  特に何の特徴もない、普通の民家が右へ左へ建ち並ぶ道路をそのまま走って行く。  懐かしい光景だった。
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