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『高いところから失礼します! あなた方には、この国を、ひいては、この世界を救っていただきたいのです!』
それを皮切り、男はこの世界の事情を説明し始めた。同時に、なんとなく状況のわかってきたクラスメイトたちのざわめきは増す。
陽キャたちは結構乗り気なようだ。
言語は違うが理解できる。そういった加護でもあるのだろう。よくある。
「テンプレだな」
本当にテンプレ過ぎて気づけば口からそんな言葉が漏れていた。
その言葉に歌春が反応する。
「ああ。……なんかあると思う?」
なんかある、か。歌春の言いたいことはわかる。
問題を抱えた国やら教会やらに召喚されてしまい、勇者の立場の者がいいように使われる展開だろう。
あなたたちは、魔王の侵略や国の危機などの窮地を救うべく召喚した勇者で……なんてことを嘯(うそぶ)きつつ、ただ国の勝手のいい私兵だったりとか。
「まだわからない。でもその可能性も考えておこう」
「だな」
しばらくして男の長い話が終わった。……いやまた再開した。いい加減終われよ。
いちいち自分たちのことを持ち上げて話すから一向に話が進まない。とりあえず話をまとめてみた。
「ようは、魔物が巣くってる〝霧〟が、年々拡大してて、このままだとヤバイってことでいいのかな?」
「たぶんな。広がり続ける地上のダンジョンってところか」
「あー、それわかりやすい」
歌春言ったみたいな簡潔な言葉で話してくれればいいが……。しかし、あの男は情報の伝達が目的ではないみたいし。
「てか、なんていうか……うーん……」
歌春の不安そうな声で唸った。
俺は歌春の疑念を汲んで言葉にする。
「胡散臭いよね。高校生の俺が言えないけど礼儀も誠意もないし、意図が見え隠れしてる」
俺たちは壇上の男の声を聞きながら、クラスメイトのざわめきに紛れて会話していた。
「そうそう……第一印象で自分たちがいかに優れているかをアピールして刷り込もうとしたのか?」
「それか、状況がわかっていないうちに圧倒して従わせにかかってる?」
「それもありそうだな。どちらにせよ相手が悪かった」
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