1-2 郷に入っては郷に従え?

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 3階の社長室へと向かう途中、大事なことを聞き忘れていたことに気付いた。 「社長秘書って、今までの方はどうされてたんですか?」 「今まではその役職を設けていなかったんだ。ご自分で全部やられていた。 でも、最近は仕事の種類も量も増えて来た。さすがにそろそろ必要だと思ってな」 「……ということは、私が最初ですか?」 「そうだな。ま、梅村が最初で最後の秘書になるのがベストだな」 「頑張ります」 笑顔で応えたものの、内心穏やかではなかった。 元カノの言った通り秘書なんかになったら、本当に元の会社に戻れないんじゃないだろうか。 悶々としてるうちに、社長室の前に来た。 久田さんがドアをノックをする。 「社長、よろしいでしょうか?」 中から返事があった。 「久田さんか。どうぞ」  ドアを開け、二人で中に入った。 「今日付けでヘブンスから梅村が来ました。さ、挨拶を」  会社トップとの対面。 これから秘書として付く相手。 かなり緊張したが、大きく息を吸い込み、腹から声を出した。 「梅村翔太と申します。よろしくお願い致します」 「蓮見だ。こちらこそよろしく」 その声をどこかで聞いたことがある、と思ったのは気のせいだろうか……
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