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3階の社長室へと向かう途中、大事なことを聞き忘れていたことに気付いた。
「社長秘書って、今までの方はどうされてたんですか?」
「今まではその役職を設けていなかったんだ。ご自分で全部やられていた。
でも、最近は仕事の種類も量も増えて来た。さすがにそろそろ必要だと思ってな」
「……ということは、私が最初ですか?」
「そうだな。ま、梅村が最初で最後の秘書になるのがベストだな」
「頑張ります」
笑顔で応えたものの、内心穏やかではなかった。
元カノの言った通り秘書なんかになったら、本当に元の会社に戻れないんじゃないだろうか。
悶々としてるうちに、社長室の前に来た。
久田さんがドアをノックをする。
「社長、よろしいでしょうか?」
中から返事があった。
「久田さんか。どうぞ」
ドアを開け、二人で中に入った。
「今日付けでヘブンスから梅村が来ました。さ、挨拶を」
会社トップとの対面。
これから秘書として付く相手。
かなり緊張したが、大きく息を吸い込み、腹から声を出した。
「梅村翔太と申します。よろしくお願い致します」
「蓮見だ。こちらこそよろしく」
その声をどこかで聞いたことがある、と思ったのは気のせいだろうか……
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