1-3 心頭滅却すれば火もまた涼し?

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 昼休憩の時間になった。デスクの上の書類をまとめ、弁当を食べる場所を開けようと整理整頓していると、赤城さんに声をかけられた。 「梅村くん、お昼一緒にいい?」  赤城さんは、いつもは総務の島で女性陣とおしゃべりしながらのランチのはず。俺も毎日、同じ島の人たちとデスクで食べる。今日はなぜか珍しく赤城さんに誘われた。 「お。赤城さんのお誘いだぞ。行ってこい、梅村!」  松田さんに背中を押され、誘いを受けた。 「はい。ご一緒させてください」 「ごめんね、松田くん。梅村くん借りるね」 「いいよいいよ!」  天気がいいので、敷地内にある小さな庭に向かった。薬草を植えてある庭があるとは聞いていたが、その日初めて足を踏み入れた。木陰に置いてあるベンチに腰掛け、弁当箱を開いた。 「たまにはいいね。外でのご飯」 「そうですね」  赤城さんの興味が俺の弁当に向いていた。 「そのお弁当、親御さん?」 「あ、これですか? 自分で作ってます。一人暮らしなんで」 「え、すごい! わたしも一人暮らしだけど、こんなのしか……」  そう言う赤城さんのお弁当はサンドイッチとサラダだった。 「いいじゃないですか。手早くできて栄養バランスもとりやすいですし」     
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