1-1 青天の霹靂

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 全ての始まりは、先週の火曜日だった。 朝礼が終わるとすぐ、部長の竹内さんから呼び出された。面倒見がよく、皆に尊敬されている上司。  いつも穏やかな顔をしているが、今日はいつになく険しい表情だった。 なんで呼び出されたのか、なにかやらかしたのか?  全く身に覚えがないかった。 「梅村、出向だ」 「えっ!?」  いつも人事異動は3月に発表されるはず。 今はもう4月半ばに入った。なぜ今になって突然? 「……部長、私は何かミスしましたでしょうか?」  そう言った途端、竹内部長は笑った。 「いいや。その逆だ」 「それは、どのような……」 「梅村をエースと見込んでの武者修行だ」 「修行、ですか……」 「うちの会社の知られざる決まりだ。どの部署にも、こうやって武者修行に選ばれるエースがいる。 しばらく関係会社や協力会社に出向して、修行をする」 初耳だった。 そんな話、今まで誰にも聞いたことがない…… 「私は、どこに出向になるのでしょうか?」 「LOTUS(ロータス)だ」 それは名前を聞いたことがない会社。不安が一気に増した。 「ろ? ろーたす? どこでしょうか?」 「協力会社だ。あとで会社概要を見ておけ」 「はい、承知しました……」     
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