1-1 青天の霹靂

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「先輩。どうしたんすか。青い顔して」  デスクに戻ると、隣の席の新卒で配属直後から教育をしてきた原が 軽い口調で顔を覗いてきた。根は真面目だし、いいやつだが、だいぶ軽い。 「どうされたんですか? だ。言葉に気をつけろ」 「はい……」  しかし、それ以上怒る気にもならない。 小さくため息をついた後、宣言した。 「俺、出向になった。今から引き継ぎ作業に入る」 「えっ。マジっすか!?いつからっすか!?」  驚いた様子の原は、言葉遣いがさらに酷くなった。 しかし、その言葉遣いを指摘する時間も惜しい。 「来週の月曜日に俺はもう居ない! だから、今からやる!」 「マジかよ!」  天を仰いでいる後輩に謝る時間などどこにも無い。その週は引き継ぎ作業に明け暮れた。
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