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「大丈夫じゃねぇし……」
ベッドの上で思い出して少し憂鬱になった。でも、仕事にはいかないとダメ。
気がすすまないが、異動初日に遅れでもしたら印象が悪くなる。本当に左遷扱いで会社に戻れなくなるかもしれない。行くしかない。
意を決して、ベッドから起き上がり、手早く身支度を整えた。
「パンと目玉焼きでいいか……」
趣味の1つは料理。学生時代の一人暮らしで始めてハマった。
今もその延長で気楽な一人暮らしをしながら、自分の好きなものを作って食べる。
休みの日には、手の込んだ物も作ってみる。スマホには料理アプリがいくつか入ってるし、ブックマークには、レシピのサイトがかなりある。
でも今朝は違う。やる気が全くおきない。
オーブントースターに食パンを突っ込む。焼けるのを待つ間に目玉焼きを作り、コーヒー用のお湯を沸かす。
「よし」
固すぎず柔らかすぎない自分好みの目玉焼きが出来た。それをトーストしたパンに乗せ、熱いコーヒーをカップに注ぐ。手を合わせて……
「いただきます」
そういえば…… と、いきなり思い出した。この当たり前の礼儀を『元カノ』になったあの人は笑った。
そういえば…… と、またあることに気づいた。あの人は自分の手料理よりも、外食が好きだった。
そして、気づいた。
そもそも、合わなかったんだ。アイツとは……
大きなため息をついた。ダメだ!ため息は幸せが逃げる!
「次こそいい彼女作ってやる!栄転してやる!俺と別れたことを後悔させてやる!」
精一杯の強がりを、自分に言い聞かせた。
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