1-1 青天の霹靂

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「大丈夫じゃねぇし……」  ベッドの上で思い出して少し憂鬱になった。でも、仕事にはいかないとダメ。 気がすすまないが、異動初日に遅れでもしたら印象が悪くなる。本当に左遷扱いで会社に戻れなくなるかもしれない。行くしかない。  意を決して、ベッドから起き上がり、手早く身支度を整えた。 「パンと目玉焼きでいいか……」  趣味の1つは料理。学生時代の一人暮らしで始めてハマった。 今もその延長で気楽な一人暮らしをしながら、自分の好きなものを作って食べる。 休みの日には、手の込んだ物も作ってみる。スマホには料理アプリがいくつか入ってるし、ブックマークには、レシピのサイトがかなりある。 でも今朝は違う。やる気が全くおきない。  オーブントースターに食パンを突っ込む。焼けるのを待つ間に目玉焼きを作り、コーヒー用のお湯を沸かす。 「よし」  固すぎず柔らかすぎない自分好みの目玉焼きが出来た。それをトーストしたパンに乗せ、熱いコーヒーをカップに注ぐ。手を合わせて…… 「いただきます」  そういえば…… と、いきなり思い出した。この当たり前の礼儀を『元カノ』になったあの人は笑った。  そういえば…… と、またあることに気づいた。あの人は自分の手料理よりも、外食が好きだった。  そして、気づいた。 そもそも、合わなかったんだ。アイツとは……  大きなため息をついた。ダメだ!ため息は幸せが逃げる! 「次こそいい彼女作ってやる!栄転してやる!俺と別れたことを後悔させてやる!」  精一杯の強がりを、自分に言い聞かせた。
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