2章 うちの上司はロクでもない

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「二年の先輩が入学したての一年と本気で戦おうとしないでください」 「ええやんええやん、最近ほんまに張り合いのない奴ばっかでなあ…」 この学園において、一年の差というはかなり大きい。 後々軍に入る奴らを入れる学校であるが故に一年のうちは基礎を叩き込むために教師にたんまり扱かれるのだ。 山ほどの課題を出され、実戦訓練で傷を作り、それが嫌になって自らこの学園を去るものも少なくない。 俺みたいに魔力があるだけで無理やり入れられた特待生にとっては、複雑な話ではある。 まあ大体逃げ出す奴らはお金を積んでこの学園に所謂裏口入学した生徒ばっかりなんだが。 「明日は新歓イベントに関しての会議や、欠席遅刻はせえへんようにな」 「わかりました」 一礼して、部屋を出る。そしてそのまま寮へ帰る道すがら周囲から向けられる様々な視線を意識に入れないようにする。 一年の癖に風紀でそこそこ権力を持っているというデマが流れているのを知ったのは先週友人に聞いてからだ。 本当は委員長とついでに副委員長の悪ふざけの処理をやらされているだけなのにどうしてこんなことになったんだろう。 あの人たちはほんとうに俺に厄介ごとしか持ってこないな。ロクでもない上司だ。 「あの人風紀のーー」 「前にーーーで」 「火影様にーーーー」 風紀委員は学園内で風紀の腕章をつけることが義務化されている。 でもこの腕章が結構人目をひくもので、どこにいようと噂されるのは正直言ってめんどくさい。 たとえヒラでも一端の風紀である以上、親衛隊による制裁の心配はほぼないと言ってもいいだろう。 だからこそ手は出せない以上、陰口や噂話が広まるのは致し方ないことだ。 ………とはわかっているがどうにも腹が立つ。
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