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「うーん、顔面至上主義者。かわいい女の子超好き」
「えっそうなん」
友里が途端にげ、という顔をする。思い出したように柔軟体操をてきぱきとまた進め始めた友里に合わせ、私も体操をスピードアップした。
「うん、修学旅行のときとかさ、同じ班でもかわいい子にだけアイス奢ってあげたりとかざらにあったよ」
「なんだそれみみっちいけど地味に嫌だな」
イケメン御曹司えげつな、そんなんやられたら奢ってもらえなかった方は傷つくわ。顔をしかめた友里に、私は満面の笑顔を作って答える。
「ま、友里がそこにもしいたら間違いなくアイス奢られてただろうね」
綺麗に高い位置からゆらゆらと揺れる茶色のポニーテール。それが似合うのは、もともと顔がいい子。
なんでだろう、同じ髪型なのに人によってこうも印象が変わってしまうのは。
「それ夏実が言う!?」
絶対あんた気に入られてたでしょ、今日だって見るなり声かけてきたじゃんよ。そう肩をつついてくる友里に、私はうっすらと笑顔をにじませて答える。
「いやあんまり関わりなかったしさ、分かんないや。どっちみち奢ってもらえなかったと思う」
思うじゃなくて、そんなことしてはもらえなかった。虚勢を張った答えが自分でも気持ち悪いくらいに口の中で重くて、私はそこからふっつりと黙った。
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