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「なあお前、いつからメガネやめたの」
いつからいつから、講義室の後ろの席から私の大嫌いな、でも他の女子には耳触りがきっといい声がせっつく。
目はテキストに向けたまま、私は答えた。
「16歳の時にレーシック手術受けて、メガネは完全にやめた」
「えっお前レーシック受けたの!? あれトータルせいぜい20万くらいだろ、だったらなんで最初っからメガネやめてなかったんだよ」
手術が嫌じゃなかったんだったらメガネかける必要ねーじゃん、最初っからさ。そう言う瀬尾の横で取り巻きの華やか女子たちが確かにー、メガネなんていまどきかける子少ないよねと口々に頷く。
何も知らないくせに。
そうつい言いそうになった言葉を、喉の奥で飲みこんで、体の中で粉々に噛み砕く。
いけない。私はみんなに優しくなければ。それがいつもの私だ。
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