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メガネ。レーシック。今時メガネかけるやつなんてほとんどいない。
さっき後ろから聞こえたワードが、私を過去に引きずり戻そうとする。
戻るもんか、絶対に。今にしがみつく思いで、できるだけ講義を始めた教授の声だけに頭を集中させようとする。
そしてふっと、思い出した。
ああ、今日は3ヶ月の周期が来る日だ。
私は隣の友人達に気づかれないようにそっと、心の中だけでひっそりとため息をついた。
ここ二週間くらいの間、雨は降ってくれない。
眠る前には、翌日雨であることを願っているのに。
毎朝起きて、今日が雨でありますようにとカーテンを開けるのに。
雨を願う私の気持ちとは裏腹に、せせら笑うように太陽は眩しく、強く日差しを降り注ぐ。
一度試しに晴れた日にあの東屋に向かってみたけれど、やっぱり彼は何となく予想していた通り、いなかった。遠目で東屋の中にカップルが向かうのを確認して、私は踵を返したのを覚えている。
晴れた日の下でのそこは、いつもと違った空間に見えた。
あの雨の公園の空間が恋しくて、そこにいるはずの人の存在が、いざ会えないとなったらその事実が重苦しく胸に迫ってくるほど大きくて、来ない雨をいつまでも私は待ち続けている。
それはまるで、先の見えない迷路の中で、どこかにあるはずの出口を探しているみたいな感覚だった。
そして私はずっと探している。ここから連れ出してくれる、何かを。
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