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すんなりとした細い手足と透き通った肌、紅も差していないのに程よく赤く、いつでも色づいている唇、艶やかな黒髪、ぱっちりとしていつつ、少し涼しげな切れ長の目。
夜21時。父方の祖母の若いころを写した古い写真データを見ながら、私はリビングのソファに一人で座りながら、来るはずの音を待つ。
テレビ電話の着信を告げる音が鳴り響いた。
四度目くらいのコール音が聞こえるまでじっと座り、やっとのことでのろのろと立ち上がって着信のリモコンを押す。目の前にある両手を広げたくらいの大きさの薄型液晶に移った顔を見て、私はほっと心の中で安堵の息を洩らした。
「父さん」
「久しぶりだな。元気か?」
ありきたりな挨拶の言葉もそこそこに、私は一番気になっていることについて聞いてみる。この質問に対する答えによってこのあとの流れが変わってくるからだ。
「母さんは?」
画像の中の父親が少し身じろぎをする。ややあって彼は口を開いた。
「母さんは今、ニューヨークに行っててな。今は家にいない」
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