3.ジレンマ

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 これ以上は危険だ、今の私はハリネズミみたいに周りを全て棘で刺して回ってしまう。そう判断して、後は当たり障りのない会話にチェンジさせ、また三か月後連絡を取ることを約束して私はテレビ電話を切った。  そして、ああやっぱり、と疲れ切った頭で思う。  母とは決定的に昔からウマが合わない。それは昔から薄々感じていて、ある日から私はその理由も分かっていた。  母と言えば、家で食事をする時やたら私にだけ三人前もあるくらいの量のご飯をよそり、食べ終わるまで笑顔で見守ってくる記憶が一番根強い。 「女の子はぽっちゃりしてるくらいがちょうどいいのよ、成長期なんだしどんどん食べていいのよ」  そう言って、母はいつも「ほら遠慮しないで食べなさい」と私に大盛りのご飯をよそった。  たまに私がもう無理と残そうとすると、「食べられるだけあんたは幸せなのよ」とか、「残すのは人としてよくないのよ」とか、小言が始まる。  それが嫌で私は全部出されたものをなるべく全部食べ、そして当然、歳を重ねていくにつれぶくぶくと太った。
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