4.PTSD

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 大量にテーブルに用意された食事をひたすら食道に流し込み、自分の部屋に戻ってのどまでせりあがってくる波を感じると、音を立てないように胃の中のものを外に出す。    そんな日々を繰り返すうちに、これが異常なのかどうかも感じる感覚すら麻痺していく。  義務のように学校へ行き、義務のように大量の食事を流し込んで吐く。  そんな異常な様子に気づいたのは、父親だった。 「最近、ろくに食べられてないだろう」  ある日の夜、部屋のドアをノックして私に話しかけてきた父親のその言葉を聞いた瞬間、目から涙があふれ出した。  学校でデブスとささやかれること、痩せたいこと、メガネをやめたいこと、どうしてあんなに食べなければならないのか分からないこと、何も考えず私は全て父親に思いのたけをぶつけた。  父は黙ってそれを聞いていた。  そしてぽつりと一言、こう言った。 「ごめんな」
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