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「瀬尾、暇なの?」
わざと眉毛をしかめて見せながら、私は返してとテキストを取り戻しにかかる。彼はひらりとそれをかわし、空中でパラパラとそれをめくる。
無邪気もすぎると邪気にしか見えない。その様子を眺めながら、私の心にまた闇が降り積もっていくのが見えた。
「うわめっちゃ印つけてる、これ付箋ってやつだろ!? 初めて見た!」
「返して」
返してよ、と心の中で叫びながら、表面上は冷静に、心の中では泣きそうになりながら、ひったくられた自分のテキストを見つめる。
目の前でテキストのページを繰る瀬尾の姿の輪郭がぼやけ始める。
これ以上は、まずい。そう思った瞬間だった。
「なに小学生みたいなことしてんの」
後ろから手が伸びてきて、空中で瀬尾の手の中にあったテキストをかっさらう。
はい、これとテキストを渡してくれた相手を、私はぼやけ始めたままの世界の中で呆然と見上げた。
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