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2.出会いは雨の下で
「夏実、お昼行こ」
昼前の2限、情報工学の講義が終わり、カバンを肩にかけながら友里が言う。
どこ行く? 綺麗にウェーブをかけた茶髪をするりと耳にかける友里の隣から、ひょっこりいつもの女子メンツ2人、成美と沙希も顔を出した。このお店行きたい! 最近話題のとこだよねそこ! と手に持ったポータブル端末を見ながらはしゃいでいる。
「せっかく誘ってくれたのにごめん、今日ちょっと先約があって。明日は一緒に食べたいな」
そうなんだ残念、じゃあ明日は絶対ねと手を振る友人たちに手を振り返し、私はそのまま笑顔をキープしつつ、しばらく歩き出した。
そして廊下の突き当りを左に曲がったあたりで、笑みの仮面を自分の顔から引きはがす。
息を深くついて廊下の窓から外の空を見上げる。雨がしとしとと降ってきているのが見えて、今度は純粋に、勝手に頬が緩んでいった。
こんな雨の日は、出かけなくちゃ。
跳ねる心に急かされて、足早に私は校舎の中を駆け抜けていく。
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