3.ジレンマ

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3.ジレンマ

「あの、聞いてないんですけど」 「そりゃそうだろうね、だって言ってないもん」  あの研究所見学会の一週間後、やっと雨が降った。  もしかしたら彼はもう来ないかもしれない、という不安と闘いながらいつもの東屋に来た私は、今日も変わらず彼がいることに安心して軽口をたたく。 「見直した?」 「またそれですか」  片方の口角を上げて悪戯っ子みたいに笑う光揮さんにため息をつきながら、私は笑った。  この場所で笑うと、心が自分のあるべきところに収まっていく感じがして落ち着く。 「まさか研究所で働いてるなんて」 「だから言ったじゃん、プー太郎じゃないって」  言いましたけど職種までは分かりませんでした、そう言うと彼はすっと眼を細めた。
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