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4.PTSD
今も昔も、人は権力と人気と美しさと大衆に弱い。
そしてタチの悪いことに、私の前に突然現れた美しい悪魔は、権力も人気も美しさも世渡りのうまさも兼ね備えていた。必然と言うべきか、彼はたちまち大勢の同級生を引き連れ、先生からの人気も勝ち取ることになった。
彼は私に初対面でささやいた言葉通り、私に対しては冷たい態度を取った。
そしてそれに感化されるかのように、今まで目に見えていなかったさざ波が正面に現れ始めた。
「デブスのくせにさ、勉強できるからって気取ってるよね」
「前から思ってたけどなにあのメガネ、似合うとか思ってんのかな」
「先生もなんであんなやつひいきすんだろ、学級委員とかいうキャラじゃなくない?」
ちょっとやめてあげなさいよ、かわいそうじゃん。よく瀬尾のそばにいるクラスの中心女子が休み時間に発するくすくす声は、色んな音の混ざり合う教室の中でもまっすぐ私の耳に届いてくる。
ここに来て私はやっと、自分の見た目は周りから見て相当醜悪なものであること、実は先生の後ろ盾が怖かったから表面化していなかっただけで、自分は疎まれる対象であるということを悟った。
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