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 あたしはべつに欲しいだなんて言わなかった。  でも、カミサマに押しつけられたのだ。自分はそれをしないからって、あたしたち人間に押しつけるのだ。  ずうっと、持てあましている。  ああ、恋心なんて、いらなかったのに。  日が長くなって、夏の気配が漂いはじめたグラウンドでは男子たちが汗を流している。  放課後、サッカー部の練習をあたしは見ていない。サッカーボールが行き交っているのは知っているし、それを追う人たちがいるのも知っている。盛んに声が上がっているから、きっとみんな熱心に練習しているんだろう。  あたしはひとりの男子生徒を見ている。  彼はあたしより一学年上で、三年生であり、キャプテンでもある。グラウンドを覗き見るのにうってつけな空き教室に忍び込んで、それなりに距離があるのにも関わらず、あたしには彼の汗がはじけるのが見えた。きらきらできれい。  薄く開いた窓の隙間から彼の香りがしそうで鼻をひくつかせそうになったところで声がした。 「ああ、コレまた完全に見惚れてるわ……」  隣にいる友だちだ。忘れていた。 「見惚れてないよ、見てただけだよ」  あたしの抗弁は鼻を鳴らして流された。
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