目覚めてみれば

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「初代国王王妃の呪いだって?」  ラカルのすっとんきょうな甲高い声に病室の罹患者が無言の抗議をする。ラカルはたちまち口をつぐみ、聞こえるか聞こえないかくらいの声ですみませんと言ってはカーテンに頭を下げた。 「で、どういうことなんだよ」 「だからそのままの意味だよ。初代国王の王妃は他ならぬ王家に恨みを抱いている」 「そんなまさか……王妃は元は少数民族の娘でしょう? それに呪いなんていう前時代的なモノなんて一朝一夕に信じられますか?」  ラカルは納得できていないようだった。そんなかつての親友に、ユダは優しく問いかけた。 「ならば聞くが、あの国のことはどうやって説明をつけるつもりだ」 「あの国って……」  近隣諸国でこのような回りくどい言い方をされる国は一つしかない。 「砂漠の亡国……」 「そう。国名すらない、呪いの蛮地だ」  稀にその国の出身を名乗る者が出稼ぎに他国に出張していたりする。そのような人々を観察するに、その国は独裁体制で貧しいことがうかがえる。  そしてそんな国にありがちなことに、その国の民を自称するものは国を貶されると激高し人を殺めることもあった。勿論そんな国の人間は誰も雇いたがらない。必然的に、安月給や日雇いの仕事に就くことになる。  出国してきた人間の動向からしかその国のことを推測できないのは、誰もその国に入れた試しがないからだった。 「国境の北の山脈を越えたと思えば南の国境に飛ばされている、山越えの途中で謎の死を遂げる、それでもなおその地に足を踏み入れようとしたものの行方は杳として知れない」 「そうだ。あの国に入ろうとしたものは入国できず、下手すれば死んでしまう。あの国のことはいつしかタブーになり、誰もが見てみぬふりをするようになった」  ラカルは黙りこくってしまった。なぜユダが、いまそんな話をするのか、意図が掴めなかったからだ。 「それで……何が言いたい」 「――俺は資料を持ち出して極秘裏に調査した」  ユダの声が一層低くなった。
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