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砂漠のなかに大理石の宮殿がある、そんな゛人を食べる゛国の真相はあまりにも酷いものだった。
国体を維持するために魔方陣を保たなければいけない。そのためにこの国の主は生きた人間を食い物にし、自分の想念を乗り移らせた。肉体を持たない自分の代わりに国を維持させた。
しかし、その操られた虚構の国民たちも今はいない。
「リチャード」
少数民族の異能を持つシンが、王の血を継ぐ者の名を呼ぶ。
「聞きました?」
「ええ、聞こえましたね。この国の主さまは荒れ狂っておられる」
十中八九、それは初代国王の妃の亡霊に相違なかった。
「どういう意味なんでしょうね」
サンは先ほどから頭のなかで響く女性の声に耳を傾けながら、その意味を考えていた。
「『あの子を救って……暴走を止めて』、か。暴走しているのは貴女だろうに、何を言っているのかねぇ」
帝国一の魔術師でも防ぐのが精一杯の吹きすさぶ砂嵐のなかで、行くあてもないまま思案に暮れる二人。
ーーそのときだった。
「うぐっ」
「サン?」
「う、うぐぐぐ……」
サンはその腹を抱え込むように背を丸め、やがてその体勢を維持することもできなくなったか、丸まった体勢のまま横に倒れた。
「サン!」
リチャードは彼に駆け寄り、手を彼の腹にねじ込むように触れさせた。
「……?」
想定外のことが起きた。
「これは……!」
害獣ムスタとの邂逅以来の、赤く燃えるような玉が、倒れたサンの背後から、太陽が昇るように空に上がっていく。
それはどんどん大きくなり、やがて太陽に代わり地面を熱した。
すぐにリチャードは氷化魔法で地面を冷やす。すると地面は緑に光り、その光は地を這って遠くまで届いた。
『あの子の暴走を止めて……!』
女性の声が響き、二人は気を失った。
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