魔術の結晶共鳴ーー第二形態

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 砂漠のなかに大理石の宮殿がある、そんな゛人を食べる゛国の真相はあまりにも酷いものだった。  国体を維持するために魔方陣を保たなければいけない。そのためにこの国の主は生きた人間を食い物にし、自分の想念を乗り移らせた。肉体を持たない自分の代わりに国を維持させた。  しかし、その操られた虚構の国民たちも今はいない。 「リチャード」  少数民族の異能を持つシンが、王の血を継ぐ者の名を呼ぶ。 「聞きました?」 「ええ、聞こえましたね。この国の主さまは荒れ狂っておられる」  十中八九、それは初代国王の妃の亡霊に相違なかった。 「どういう意味なんでしょうね」  サンは先ほどから頭のなかで響く女性の声に耳を傾けながら、その意味を考えていた。 「『あの子を救って……暴走を止めて』、か。暴走しているのは貴女だろうに、何を言っているのかねぇ」  帝国一の魔術師でも防ぐのが精一杯の吹きすさぶ砂嵐のなかで、行くあてもないまま思案に暮れる二人。  ーーそのときだった。 「うぐっ」 「サン?」 「う、うぐぐぐ……」  サンはその腹を抱え込むように背を丸め、やがてその体勢を維持することもできなくなったか、丸まった体勢のまま横に倒れた。 「サン!」  リチャードは彼に駆け寄り、手を彼の腹にねじ込むように触れさせた。 「……?」  想定外のことが起きた。 「これは……!」  害獣ムスタとの邂逅以来の、赤く燃えるような玉が、倒れたサンの背後から、太陽が昇るように空に上がっていく。  それはどんどん大きくなり、やがて太陽に代わり地面を熱した。  すぐにリチャードは氷化魔法で地面を冷やす。すると地面は緑に光り、その光は地を這って遠くまで届いた。 『あの子の暴走を止めて……!』  女性の声が響き、二人は気を失った。
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