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彼の目は虚ろで、ことあるごとにいかがわしい組織への入会を迫った。
久しぶりに会ってから、昔を懐かしむ間もなく彼の勧誘に付き合わされ、気味悪くなってラカルは彼と距離をおいたのである。
その組織の名は……「平和と友愛の詩会」。聞こえはいいが、内容がおかしかった。戦争の当事者でもなかった共和国に突然現れ、破竹の勢いで若者を取り込むそれは、平和を説いていながら、軍隊を持つ共和国が世界紛争の諸悪の根元だとして武力革命で政権を倒すことで気勢をあげていた。
そもそも共和国の軍隊は、少なくともそのときは他国の軍隊と交戦していないし、国際法を破るような虐殺もしていない。そもそも軍隊は攻められたときの防衛でも機能する。軍隊のない国家など存在するだろうか。
そしてなにより、平和のために人を殺すと公言して憚らないのである。訓練をしただけの軍隊に人殺しと罵声を浴びせかけたその舌が乾かぬうちに。
そこまで思い出して、ラカルは心配になった。彼ーーユダは、軍律の元動く自分に助けられることを良しとするだろうか。
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