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「神というのは、その身を清めた水やご自身が流した血等からお子が生まれる事があるのです」
「へえ…」
「神話で黄泉の国から逃げ帰った伊耶那岐が身を清めた際に神様が産まれたって話があったな」
「よくご存知で。三貴神様の誕生話ですね」
そういえばそんな話を聞いた事があるなと飛鳥が思いを巡らせていれば、真輝は真剣な顔で居住まいを正した。
「その子はこちらの世界では危険な目に遭うかもしれない。だから真咲が己の身を守れる力がつくまで、ここで預かってはもらえないだろうか」
「別に私はー」
「それは、真咲や私達にも危害が及ぶということでは?」
飛鳥の言葉を遮り、静かに、しかしはっきりとした口調で風見は問い返した。
それに真輝は首をふった。
「そなたらはこの神棚を祀っている以上、わが一族の氏子だ。氏子に危害は加えない。ただ、そなたらを騙して、真咲を連れ出そうとする輩がいるかもしれない」
「それから守ってくれってことか」
「先ほどの事でそなたらが金で動く様な人間でなく、真咲を大切にしてくれている事はよくわかった」
「預けるに足る人間か試したってことですか」
飛鳥が縞をじっと見れば、申し訳無さそうに苦笑した。
真輝はしばし黙した後、飛鳥達に目を合わせ、頼めないだろうかと静かに呟いた。
神様といえど目の前にいるのは、我が子を心配する父親の姿だった。
「まあ、真咲が来てから良い事ずくめですし?いなくなったら寂しいしね?」
そう言って目線を寄こす飛鳥に、風見はため息を吐いた。
「チビに飯作るのも日課になってきてるんで、まあ今まで通りでいいなら」
二人の言葉に、狼二人は目を輝かせてしっぽをふった。
「ありがたい。どうか、どうかよろしく頼む」
(しっぽ!)
口を押さえて笑いを堪える飛鳥を、似た様な顔をした風見が肘で小突いた。
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