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家属食堂は飛鳥の祖母が始めた大衆食堂だった。
両親が幼い頃他界した彼女はここで祖母と暮らしていたが、半年前にその祖母も亡くなった。
飛鳥は写真会社でカメラマンを目指し、アシスタントとして働いていたため、店は実質ただの住居と化していた。
転機があったのは祖母の死から三ヶ月後、二十五歳でこの世界に入ってからやっと物撮りの仕事を一部任せてもらえるようになった頃だった。
急に社長が予てより不倫の噂があった事務の女性と姿を消した。
それを機に腕のある先輩三名は独立、小さな会社に残ったのはカメアシの飛鳥と先輩カメラマン二人だった。
レギュラーや進行中の仕事も三人で回さなければならず、朝早く出て深夜に帰る生活で身も心もボロボロになっていた時、幼なじみの尊川風見と再会した。
「じゃあ十八のときから四年前まで外国にいたの!?」
「フランス三年、イタリア三年、京都の料亭で四年」
風見は様々な名店で修行を積んだ凄腕の料理人になっていた。
そして、自分の好きのものを作りたいという思いから、独立して自分の店を持ちたいという彼女に、飛鳥は冗談で自宅兼食堂が空いてるがどうだと告げた。
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