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彼女は食堂のことを覚えており、ぜひやりたいと乗り気で返事をされた結果、家属食堂は復活した。
祖母の部屋も空いていたので風見もこの家に住む事になり、飛鳥は栄養たっぷりのご飯と祖母と別れて以来の家に誰かのいる生活を手に入れた。
「ほら、志咲あーんして」
お昼のピークも過ぎて人がいなくなった店内のカウンターで、飛鳥は赤子にごはんを与えていた。
赤子のお包みに刺繍されていた名前を呼べば、志咲は大きく口を開いた。
もぐもぐと与えた食事を食べる姿は本当に愛らしかった。
「しかし一月で一歳児くらいに育つとは、やっぱ人間じゃないんだな」
「混乱してたあの夜、目を離した隙にカウンター裏においてあったオリーブオイル一本飲み干した時点で普通じゃないとは思ったわ」
志咲は犬耳やしっぽからして人ではないと思われたが、拾ったばかりはまだ生後数ヶ月程の見た目だったのに何でも食べられ、手足の力も強かった。
警察に連れて行くわけにもいかず、育児経験のない人間でも育てられるくらいには強い子だったので、しばらく頼むと言う言葉を信じて面倒をみていた。
件の耳も、戻れ戻れと撫でれば耳は消えて、感情が高ぶった時等に現れる程度になった。
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