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「ちょっと落ち着こう。何を話すのも感情論だと終わりが見えない」
「優姫? ちょっと私ともう一度散歩でもしようか」
「わっ!? 美優!?」
小倉社長は私を取り合っていた男3人を、美優は私をそれぞれ引き剥がし、互いに視線を送り合ったかと思うとあっという間に連れ出されてしまった。
足がもつれてしまうのを気遣いながらも、どこまでもどこまでも歩き続ける美優。
「どこに行くの?」
「静かなところ」
振り向くこともしないで答えてくれたけど、なんだか怒っている気もしてそれ以上何も言えなくなった。
少しの距離を歩いて着いた先は、最上階にある展望ルーム。
横に長い建物の上にちょこんと乗った大きなテラスのような場所、そこへ出る前の扉の横には “ご自由にお使いください” と双眼鏡がいくつか用意されていた。
そこからは湖が一望でき、水鳥が優雅に泳いでいたり透明度が高いからこそ泳いでいる魚までちらほら見える。
これは確かに双眼鏡があれば楽しめそう。
うっかりそんなことを考えているのが表情に出てしまってたのか、時折確認するように私を見ていた真剣な眼差しだった美優の表情が綻んだ。
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