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ぶっきらぼうに渡してきたカップを受け取ってテーブルの上に置いた。
「……」
「……」
無言の空気が、胸が張り裂けそうなくらい重たい。
そんな沈黙を最初に破ったのは胡比だった。
「彼女が居るなら、ちゃんと居るって言えばいいのにな?」
「へ?」
「自分のイメージのために彼女の存在を隠すとか、告白する側からしたらはた迷惑だっつーの!」
そう言ってずずっとミルクティーを飲む胡比。
「な、由香利だってそう思うだろ?」
「う、うん」
「俺は由香利が相当な勇気を振り絞って先輩に告白したんだって分かる。それを笑いのネタにするなんて、許さない。だから、今日は二人で自棄ミルクティーだ」
カンパーイ! と元気よく胡比が叫ぶもんだから、面白くてついプッと噴出してしまった。
「なに、自棄ミルクティーって。面白すぎるでしょ」
「俺の名案を笑うんじゃねぇ! ってか、やっと元気になったみたいだな」
そう言って、胡比は私の頭を撫でてくしゃっと笑った。
「胡比のギャグのお陰でねー」
「だから、ギャグじゃねぇ!」
私たち二人は笑いながらカップをコツンと合わせてミルクティーを飲む。
苦い思い出がすべて塗り替えていくような甘さが口の中で広がる。
上書きされて、優しくて甘い思い出へと。
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