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カヅラノヨネツ
体全体に何かが伸し掛かるような鈍い痛みで眠りから覚め、僕はベッドから体を起こした。部屋が暗い。いつもより早く目覚めたみたいだ。
ぼんやりとしていた頭が冴えてきて微かに聞こえる雨音に気づいた。傍にある窓を覗くと、いくつもの水滴が目元を叩いてくる。外の景色は薄灰色の雲の下、弱々しく降り注ぐ雨に濡れて明るくない。
雨の日は決まって体が重い。このまま寝床に倒れこんで雨が止むまで寝ていたくなる。しかしそれは許さないと言わんばかりに、外から重い鉄の音が聞こえてきた。何度も何度も、寝ている者がみな目を覚ましてしまうくらい大きく、そして力強い音が街に響き渡る。
「飯の時間だ! 起きて来ないやつは飯抜きだぞ!」
いいか! 絶対に起きてこいよ! 必ずだぞ! と最後に食堂の料理長による大声で鐘の音は止む。食事の時間の合図だ。食事はこの機会を逃すと日が落ちるまでとる事が出来ない。
「……寝坊じゃないか」
急いで身支度を整えて食事に向かわなければ。いつもより早く起きてなんていなかった。僕は思ったよりも長く寝てしまっていたようだ。
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