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「あっ! はっけーん!」
「え?」
「土御門くん、見に来てくれていたんだ。パパの街頭演説」
いきなり肩を叩かれて、もしかして美恵のほうから自分を見つけてくれたのかなと思い、振り返ったが、ニコニコの笑顔でそこにいたのは紗枝子だった。
紗枝子は、胸元にフリルのレースとリボンをつけた白のシャツ、これまたフリルがたくさんついたピンクのミニスカートという、いかにも少女趣味な服装である。
紗枝子本人はさばさばとした性格で、自分の着る服になど頓着しないのだが、首相夫人である母親の綾子が好きこのんで娘にこういう可愛らしい服装をさせているらしい。紗枝子がクラスメイトの女子にそう話しているのを晴久は聞いたことがある。
「土御門くんは、選挙とか政治に興味なさそうだったから来てくれないかもって思っていたけれど、来てくれて嬉しいなぁ。やっぱり、私たち選挙権のない子どもでも、日本の将来のために早くから政治には関心を持っておくべきだよね!」
「いや、僕は……」
「たくさん人がいるねぇ! パパ、人気者だもんね! これで今回の選挙も安心! 良かった、良かった。あはは!」
「ここで待ち合わせを……」
「パパ、すっごく演説が上手でしょ? 私ね、パパが部屋で四苦八苦して演説の練習をしているのを見ちゃったんだ。私のパパは努力家なの。でも、あんまり無理はしてほしくないなぁ。体調を崩して選挙前に風邪を引いたら大変!」
「あ、うん、そう……」
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