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こんなにもたくさん人がいる場所で座りこんでいたら、誰かにうっかり蹴られる可能性が高いと考えた晴久は、慌てて女の子を助け起こした。紗枝子も女の子に気づき、「怪我はない?」と優しく言いながら女の子についたお尻のほこりを手で払ってあげている。女の子は真っ白な和服を着ているため、少しでも汚れると目立ってしまうのだ。
「あ、ありがとうございます。ユメは大丈夫です。でも、一緒にいた人とはぐれてしまって……。ミエさまはどこにいるのかなぁ……」
「え? 今、ミエって……」
ミエとは自分の姉の美恵のことだろうかと思った晴久は、「ミエって、土御門美恵のこと? 僕の姉と知り合いなの?」と聞こうとして女の子の顔を正面から見た。すると――。
(金色の瞳…………)
長い黒髪に着物姿という、いかにも純和風な女の子なのに、その瞳は宝石のように美しい金色だったのである。晴久の両目がその金色の瞳をとらえた時、
(この子は人間ではない)
直感で晴久はそう思った。
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