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晴久は、生まれつき、人と人ならざる者を見分ける「見鬼の眼」を持っている。つまり、霊視能力で普通の人間が見ることのできない鬼や妖怪、怪奇現象を視ることができるのだ。
ただし、そんな不思議な力を持つ晴久には大きな悩みがあった。妖怪などを見ることはできても、それらをお払いして鎮める能力がないのである。だから、こうやって人ならざる者とばったり遭遇して、もしも凶暴な妖怪や悪霊だった場合は身を守ることができないのだ。
(悪い妖怪ではないみたいだけれど……。そもそもこの子は妖怪なのか? 何というか、もっと高レベルの存在のような気が……)
晴久が女の子と見つめ合ってまんじりとも動かないため、紗枝子が「どうしたの?」と聞いた。
渋谷駅のあちこちで悲鳴が起きたのは、その時だった。
「きゃーーーっ!」
「た、大変だ! 総理が倒れたぞ!」
さっきまで総理大臣の演説を聴いていた群衆が大パニックに陥った。
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