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「え?」と驚き、晴久が息もたえだえな平野首相をよく観察すると、視えたのである。
首相の首に巻きついている蛇の姿が――。
(やばい! 首相は誰かに呪詛をかけられている!)
何者かが平野首相を呪い殺そうとしているのだ。早く呪詛を解かないと、首相はさんざんもがき苦しんだ挙句、今日か明日には死んでしまうだろう。
晴久は、ガタガタと身を震わせながら父親の苦しむ姿を見守っている紗枝子の恐怖に満ちた横顔をチラリと見た。
(何とかしなきゃ。……でも、僕にはどうすることもできない。僕は……陰陽師じゃないから)
クラスメイトの父親が死にそうなのに、見鬼の眼を持っているというのに、何もできない自分が情けなく、晴久は唇を噛んだ。
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