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青年が生まれた日は、土砂降りの雨だった。
一族の中で青年はスクスクと成長した。
青年が成人の試練を迎えてすぐ、一族は隣の部族に襲撃された。
一族が襲撃され、青年を残して全滅した日も、土砂降りの雨だった。
飢えや渇き、孤独や、暑さ寒さに苦しみながら荒野を彷徨い歩き、優しいその声を聞いたのも、土砂降りの雨の中だった。
「私の中で眠りなさい・・・」
その声に導かれるように、潜り込んだ洞窟。
洞窟の中に倒れ込んだ青年は、とても不思議な夢を見た。
太古の海に揺蕩う不思議な海藻や生物たち・・・。
ほんのひと時目覚めた青年は、最後の力を振り絞り、洞窟の中に夢で見た光景を描き、力尽きた。
・・・それから数万年の月日が過ぎ去った、ある土砂降りの雨の日、町外れの山で大きな土砂崩れが起きた。
土砂崩れの斜面から現れたものに、町の人々は驚く。
そこには、巨大な恐竜の肋骨に守られるように眠る古代人の骨と、古代人が知るはずもないウミユリや三葉虫、アノマロカリスやオパビニアなどの太古の生物たちの姿が、地面いっぱいに描かれていた。
多くの謎を残したまま、青年と恐竜は町の博物館で、今も夢を見続けている・・・。
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