嘘が吐けない竜  no de lie DRAGON

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 今は、その失った方法を教えられ眠りにつける。たとえ眠りについても誰一人俺を殺す事は出来ない。  眠りながら無意識に吐く毒の息で毒の木が育ち、毒の沼で出来、毒の森が出来た。  誰もそこに入る事は出来ない。俺はその毒の森で、誰にも邪魔される事のない夢を貪っている。  *** *** ***  あくる季節。  目を覚ました俺に差し出された戦士には、見取り人がついていた。  なんでも、これから俺と戦う戦士の友人なのだそうだ。共闘するのかと問えば、それは出来ないと戦士の方が答えた。  戦いを見届ける、青年はこの国の王子なのだと言う。  俺は、腕を組み平然と友人を供物に差し出す、国の王子をまじまじと見つめた。 「見届けたいという事は、その友人という関係は、お前にとって大切という事だろう?」  王子は腕を組んだままそっけなく答える。 「だが、国を守る事の方が大切だ。お前が、自分の眠りを得る事が至上であるように」  なるほど。王子は後に国を治める王になる者だと云うからな。国を平穏に収めるのが王の仕事であるなら、国の平穏の為に供物を差し出すのは王子にとって、重要な事に違いない。その為になら友人を差し出す事など大したことではない……そういう事か。     
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