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俺は納得して頷いた。正直人間の都合などどうでもいい事だが、戦いをただ見届けるという人間はこの王子が初めてだ。今まで何度か、どういう理由か見学していた人間がいたが……それらは途中で逃げ出すか、最後に俺に挑みかかってきたり果ては、俺達の戦いを邪魔してきたりする。
手を出されるのは嫌だ。
だから、邪魔はするなよと王子と約束をする。
違えるようであれば王子だとかいう肩書は関係ないと伝え、俺と王子の友人との戦いは始まった。
一人で挑んで来るだけの事はある。毒の吐息を無効化するためにまず、戦士はもっと強い毒を仰いで剣を抜いた。薬の効果か、人間とは思えない力で俺の鱗を数枚たたき割る。だが、その都度に血を吐き出す。どうやらかみ殺す事はしない方がよさそうだ。
あの戦士は不味そうだな……。そんな事を思いながら、肉体強化についていけなくなったらしい、全身から血を噴き出しながら迫ってくる戦士が力尽きるのを待った。
鋼の剣を尻尾の一振りで叩き割り、素手で殴りかかってくる戦士を腕で振り払う。
体液の全てを失った青白い体が砂の地面に転がる頃、俺は何時にない空腹を感じていた。これから差し出された供物をいただく。良い眠りにつけそうだ。
ふっと俺は振り返り、約束通り全てを見届けた王子を伺った。
先に仰いだ毒によって肌が紫色に変色して事切れている戦士を、上からじっと見下ろしている。
「王子、」
呼びかけてみたら少し慌てたように王子は顔をあげた。
「なんだ、ノーデライ」
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