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ノーデライ。それは、俺の名前。
嘘を吐けない、とかいう名前だという。どこの言葉かは知らないが……いつだったか、魔法使いが供物になった時にそんな名前が付いた。俺は俺だ。名前なんてどうでもいい。それでも多少不便なので一応名前は持っていたんだが……その、名前を聞いた魔法使いが笑いながら言ったのだ。
ライ、嘘か。
嘘を知らない癖にライ。
それで魔法使いが俺をノーデライと呼んだ。以来、俺の名前はノーデライになった。
というか、それまで俺は人間たちに名前なんて名乗った事なかったんだけどな。
「やっぱり『それ』は、大切だったんじゃないのか」
俺の問いに王子は顔色一つ変えずに答えた。
「何度も言わせるな。国の平穏が第一だ」
「そのためになら大切なものでも差し出せるのか?人間というものは」
王子は目を閉じて少し考えてから答えた。
「……そうかもしれないな」
「俺だったらそんな事しないけどな」
「お前はいいだろう、大切なものが『眠り』だけなんだから。俺には…守るべきものがたくさんある」
そこで初めて少しだけ、悲しそうな顔をして慌ててその顔をそむけ、王子はそう言った。
「…この人を食べないのか?」
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