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「……そんなもの、知ってどうする」
「そうだな、そんなものを知ってどうするのか俺もよくわからないが」
魔法使いから名前を尋ねられた時まさしく、俺はそのように答えたと思いだして口の中で笑う。
「……ラスハルト・A・ファイアーズだ」
「長いんだなぁ」
俺の正直な感想に、ラスハルト王子は苦笑する。
「ならラスでいいよ」
*** *** ***
どんな夢を見たのか。そんな事は覚えてない。
覚えていないけど……俺は、もしかしたら彼と夢の中で会っているような気がする。
あれ以来、ラス王子は時々俺の戦いを見に来るようになった。その度にどうでもいい雑談を交わすようになり、いつしか俺はそれを秘かな楽しみとして感じるようになっていた。
都合で王子がこれない時は供物の中に、手紙が入っていた。でも俺は文字なんか読めないんだよなぁ。仕方がないのでいつの間にやら出来ていた神殿みたいなところで管理人をやっている神官役とかいう人を呼びつけて、読んでもらったり文字を教えてもらう事にしたり。
腹を満たして眠くなるまでの数日間。自分から積極的に人間との会話や意思疎通を試みるようになっていた。
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