嘘が吐けない竜  no de lie DRAGON

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 久しぶりに体を動かし、町を楽しんだ俺は満足して家である森に帰り、夢を見る為に体を横たわらせる。疲労感さえ今は心地よい。久しぶりに深い眠りにつけそうだ……そうだ。今度からは食後、少し体を動かした方がいいかもしれない。  そうした方が心地よく眠れるに違いない。  毒の吐息を吐き、毒のある木に守られた森で俺は夢を見るべく目を閉じる。  とはいっても、夢を見たという事は覚えているけど内容までは流石に覚えていられない。  ただ、夢を見ているなという気配が心地よい。退屈な人生の中でただ夢の中でだけ、俺は充実感を得ているような気がするのだ。  人間たちには感謝している。俺に、夢を見る方法を教えてくれたのが人間達だった。  教えてもらうまで俺は夢を見る事も、そもそも『眠る』事さえ知らなかったんだ。逆に人間たちは驚いていたな、俺が眠らないって事。  目を閉じて警戒を解く。眠るという行為は結構危険だ。意識している世界を意識しなくなるわけだろう?  だから、俺はたぶん眠るという行為を失った、忘れていたんだ。  改めて教えられ、俺は今眠って夢を見る事が出来る通り。俺は眠れないわけじゃない。ただ長い生の中でその方法を忘れてしまっていただけに違いない。  人間に限らずほとんどの生物は眠るらしい。そう言われてみればそうかもしれない。人間もそうだけど眠る時、無防備になるからその眠る姿を隠す事が多い。     
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