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俺も大昔は自分の無防備を自覚しながら寝ていたのかもしれない。でも、いつからかその無防備を警戒して、眠る事を忘れてしまった様なのだ。
眠らなくても良い、俺がドラゴンという生物だった所為もあるだろう。
人間は眠って夢を見るんだそうだ。夢を見るのは至上の幸せなんだと俺に教えてくれた人間には感謝している。本当だ、夢を見るというのは何を差し置いても優先したいほどに愛おしい、至高の一時だった。
素晴らしい、何という甘美なまどろみなのだろう。
眠りと夢は俺に、長らく失っていた安らぎを与えてくれた。
その幸せを知ったのち、俺からその快楽を奪おうとする者がどれだけ憎らしく思えた事か。
人間たちには感謝している……俺に、失っていた安らぎを与えてくれた事。
そうやって俺に眠りと夢を教えた人間たちは、俺がその快楽を貪っているのを突然邪魔して来た。
俺は彼らに感謝はしていたが、快楽の一時を奪われる事はそれ以上に許す事が出来なかった。
固い鱗に鋼を通す事に苦労していた彼らに毒の吐息を吐く。
それだけで俺の眠りは守られる。もはや俺の眠りを邪魔する者はいない。誰も俺の眠りを妨げる事は出来ない。
邪魔をした人間たちは俺の怒りに平伏し、その時俺と約束をした。
彼らは俺の眠りを妨げないという事。俺も眠りを邪魔されない限り彼らに報復はしないという事。
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