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あくる日目を覚ました俺の所に、人間たちは自ら供物を差し出すようになった。そうする事ですぐさま俺が眠りに落ちるように。
目を覚ませば食べるものがある。目を覚ましてもすぐさま、いとしい夢を見る為に腹を満たす事が出来る。
俺はその待遇にすっかり気分を良くした。
同時に、人間たちが俺をすっかり恐れている事も理解した。別に俺は彼らに威張り散らしたい訳じゃない。俺は、俺がやりたいように生きている、ただそれだけなのだから。
ただ、その退屈な生の中で眠る事、夢を見る事。それが甘美な快楽と知り、それをひたすら貪りたいだけだ。人間たちは俺がそのように眠る事で助かるのだという。俺と人間たちの利害が一致したというわけだ。俺に供物を差し出すのも、そういう利害の一致によるところらしい。
なるほど。
俺はお前たちの平穏の為に、供物を差し出すように要求する権利があるというわけだな。
*** *** ***
約束は何度目か、変更された。
何しろ俺には、俺が眠りにつくために欲する供物を要求する権利がある。
それが、お前たちに約束されるという『平穏』の代価だ。
俺もまた、お前たちに約束する『平穏』を欲している。俺にとっての『平穏』は眠る事。
俺を満足させて甘美な夢を俺に、見させる事だ。
俺が夢見る眠りを妨げない事。
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